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店舗や街灯の上に広がる 暗くて大きな壁

【家】って、人が住まなくなると どんどん傷みが進んで朽ちてくる。
無人になったまま月日が経った家屋は、
外の壁や屋根はもちろん、内部の部屋や天井などにも、ほころびが出てきてしまって。

以前、ご近所さんで、
それまで住んでらした家から街の方へ引っ越していったご家族があったのだけど、
無人になって数年間そのまま放置されていた一軒家は、
いつからか、傷みが目に見えて分かるようになり、寂しい小屋のようになっていき。。。

こうした空き家の様々な問題は、最近の日本の報道で取り上げられていますね。
“ 人が住まなくなっただけ ” なのに、家がいきなり年老いていくのは、どうしてなんだろう?



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香港でも、古くからの唐樓(アパート)は、かなり傷んでいるのが見て取れます。
こうした建物の1階部分には店舗が入っていることが多くて、
肉屋 ・ 薬屋 ・ 雑貨屋 ・ 茶餐廳 などなど、人の出入りがあって活気づいている建物も。
ただ、
店舗が入ってる唐樓たちって、
昼間はさほど感じないのだけど、日が落ちて夜になるにつれ、
住居部分が暗い大きな “ 壁 ” になってそびえ立つかのように見えてきます。
にぎわう店や オレンジ色の街灯 ( こちら ) に照らされた道よりも、
むしろ、その上にある 明かりが少ない住居部分の方が目に付くようになってくるのです。

煌々と光が灯る明るい部分よりも、暗いままでいる住居の方が存在感を出すかのようで、
独特な雰囲気で立ちはだかってて。

ちょっと怪しげな空気が漂っていると言うか、そこだけ時が止まっていると言うか、
人の気配を感じないことの方が、不思議と際立つような気がします。
考えてみれば、店舗部分は1階だけであって、
その上に伸びる住居部分の方が圧倒的に大きいんですものね。
そのぶん、暗い大きな “ 壁 ” の方が目に付くのは当然かもしれません。
ここに載せた写真たち、そういう目で見ると、暗い住居部分の方が気になりませんか?

( * 日本で言う1階は、香港では【地下】と書きます。香港の1階は日本で言う2階。
   この記事では、日本式にグランドフロアーを「1階」と書いています。)



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暗い壁のような中にも、ところどころにポツポツと明かりが灯ってる部屋があったり、
昼間だと洗濯物が干してあったり、窓際に鉢植えが置いてあったりして、
人の暮らしが、まだそこに残っている気配は、わずかながら伝わります。
だけど、
住んでいる人が居ても、夜の街が遅くまでにぎわう香港。
夕飯を外食したり、そのまま夜の街に出ていたりする人々が多いからでしょうか、
明かりが消えたままの時間が長いから、
そのぶん、独特な雰囲気を放つ時間は長いような気がします。



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同じ時間帯でも、高層マンション群を見上げると 明かりの数はかなり多いんですよ。
そう、マンションの明かりが まるで夜景のひとつになるほど、多い。
それは、
使い易いキッチンや間取りが備わっているマンションの自宅で過ごす人々が多いからか、
そうでない唐樓だと 部屋の中にいるよりも外へ出た方が閉塞感が少ないからか、
同じ 【人が住む建物】 でも、灯る明かりの数には 違いがあるような気がします。
もちろん、唐樓の方が無人になった部屋が多いという事実もありますしね。

あれほど有名で、買い物客や観光客が絶えない女人街でも、店の上には真っ暗な壁。
深水埗の露店がずらりと並ぶ道でも、
北角でひときわ活気づく春秧街の街市(市場)でも、
店舗や露店の上には真っ暗な壁。
明かりが氾濫する1階部分と その上に続く人の気配が無い部分とのコントラストって、
商店街と唐樓が同居している下町ならではの光景なんじゃないかな。

そして、
そんな明かりの少ない唐樓の向こう側に見える、たくさん明かりが灯る高層マンション群。



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こんなふうに見上げながら突っ立ってると 通行人の邪魔になるんだけど、
下があまりにまぶしいから、思い出したように その上を眺め上げることが何度も。
上の部分がこれだけ暗いなら、視線を伸ばしたその先に星のひとつも見えていいのにね。
月は浮かんでても、星は目をこらさないと探せない。
・・・それほど街全体は明る過ぎるのに、
明かりの消えた唐樓は、まだまだたくさん建っています。

遅くまで明るいままの1階と、その上に続く暗い壁と、星がなかなか見えない空。
香港なんだよなぁ・・・と感じる 夜の顔 です。

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by hongkonggaffe | 2016-01-30 18:18 | 香港ふうけい | Comments(14)
Commented by leslie339 at 2016-01-30 21:35
こえださん
確かに仰る通りに唐樓の上の方って暗いですね?
単身世帯が多いのか?空き家なのか?
そう言えば男人街の唐樓に出入りする人を見た事がありますが、普通の女性でした。
今まで余り気にした事が無かったので今度香港の友人に聞いてみます。
Commented by Jyujai at 2016-01-30 22:00 x
母の実家の近所の家が、もう10年ぐらい前から空き家で朽ちて崩れていたのですが、その実家もすでに3年ぐらい住む人がいなくなりました。人口減少が続く日本では仕方がないものとはいえ、寂しいものですね。
香港の事情はどうなんでしょう。やっぱり古くて狭い住居は、借り手もいなくなってくるのでしょうか。
Commented at 2016-01-31 14:06 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by shangrila at 2016-01-31 21:04 x
ポツポツと空きのある明かりもこの頃の香港っぽい風景な気がします。一回でいいのでワーキングホリデーみたいな感じで住みながら働いてみたいと思いながらはや、10うん年。
くらい壁も賑やかな壁も、私たちが語り続けていけば、ただの歴史ではなくスポットライトがいつか。。うん10年後かもしれませんが、あたるような、そんな事を思いながらブログ書いてます
Commented by silentmiaow at 2016-02-01 12:47 x
こえださん、
以前友達の所有するアパート(半島側の下町でした)に行ったことがあります。唐楼ではなく、規模の小さい団地という雰囲気でしたが、友人はそこに複数戸を持っていて、一部屋だけをたまに使ってる感じでした。それだけ余裕があるにせよ、そんな感じで常時は使われてないお部屋の窓が、こえださんのおっしゃるような「真っ暗な壁」を構成しているのだとしたらちょっとさびしいような残念なような。
逆に、自分が泊まっているホテルから見える、生活感アリアリの窓は灯の色も暖かく、もう興味津々で覗いてしまうのでした。
Commented by chintau at 2016-02-03 13:27
私の実家のお隣さんも、何年かしばらく空き家になっていて、寂しい感じがしていました。この間しばらくぶりに行ったら、なんと2軒、新しい家が建っていて、既に人も住んでおられ、やはりあの、時が止まったような感じはなくなり、ある種の華やかさとでもいうのでしょうか、温かな感じがしました。
お写真の、明かりが灯らない唐樓って、ほんと、壁みたいですねぇ。全然現実的ではないですが、もし私が香港に部屋を借りて住めたとしたら、やはり老朽化や衛生面を思うと、マンションを選ぶと思います。古い唐樓を外から眺めているのは、とても好きなのですが、勝手なものですね。。。
Commented by hongkonggaffe at 2016-02-04 04:59
♫ 花襲人さん
そうそう、人が住んでる部屋なのか、空き家なのか、どちらなんだろう?と分からないことも多いですよね。夜は記事に書いたような香港特有の現状だから分かり辛いんだけど、昼間だとなんとな~く気配で見分けられるような気もします。唐樓住まいの方々でカーテンを付けてる人は少ないから中が見えることが多く。窓越しに何もなくて下から見上げてもガランとしてる部屋だと「もう誰も入居しないんだろうな」と感じてます。お友達に聞けたこと、教えて下さいね。
Commented by hongkonggaffe at 2016-02-04 05:09
♫ Jyujaiさん
なるほど、人口減少との関係ってあるんでしょうね。まさに地方都市のウチのエリアだと、街から離れた年齢層高めの町に空き家が多かったりするような。その一方で、そのエリアの地価がお手頃だったり、郊外に住まうことを求めて戸建て住宅を考える層が増えたことから、空き家だった所に新興住宅地が生まれつつあるような面もありますね。ウチからもちょっと歩くとお洒落な家やカッコ良くてセンスのいい家が建っています。・・・住環境厳しい香港だとどうなんだろう?
Commented by hongkonggaffe at 2016-02-04 05:17
♫ 31日14:06の鍵コメさん
そうだったのですね。年数が経ったマンションでも、新しく越してきて自由にリフォームすることの繰り返しで、建物はまた息を吹き返していく(基の構造は疲れてても)のかな?(近隣さんのリフォーム工事音でタイヘンだったことや、排水管などの修理とか、いろいろお話は記憶しているうえで、、ですが)・・・堅尼地城に大勢住まう欧米人さん達が、おしゃれにリフォームした部屋でくらしてらっしゃったり、こじゃれた飲食店が入ったり、手が入るエリアもあるんですよね。
Commented by hongkonggaffe at 2016-02-04 05:34
♫ シャングリラさん
いつかスポットを、、自分も今までのブログの中で、唐樓に惹かれる部分を何度か書き残してきましたが【老朽化ゆえの危険・衛生面・治安】等々に配慮しつつの共存って難しいんだろうなぁと思うことの方が大きくなりました。香港の人々の中にもジレンマを抱えつつ試みをする皆さんがいらっしゃるんでしょうね。博物館やワークショップの場に活かしたり、ホテルやブティックやアート工房などの空間にしたり、手を入れながら活用しようとする動きが増えてきてて。
Commented by hongkonggaffe at 2016-02-04 05:48
♫ silentmiaowさん
あぁそうなんですね?複数戸所有の持ち主さんの中には、貸し出し物件にする場合もあるのかなぁ。政府が管轄する公団住宅だと不可でしょうし、入居希望者の抽選が行われるとも聞いたことがありますが、自由が効く物件だったら活かし方があるかもですね。・・・頂いたコメの最後の2行はウチもそうです。「ホテル選びの重要条件はマンション・唐樓になるべく近い場所(或いは近い部屋)」なのです。カーテンを付けてる方って少ないから適度に遠慮しつつですが(笑)。
Commented by hongkonggaffe at 2016-02-04 06:00
♫ chintauさん
ウチは地方都市の郊外なので、空き家も多かったんです。でも地価の安さや広めの宅地で戸建て住まいを望むファミリーが増えて、取り壊し&新築物件が次々に生まれました。そうなると宅地開発が進み、建て売り住宅に移り住んで来てマイカーを使って通勤する人々も増えて。極端に言えば新しい住宅エリアが生まれちゃうんですよね。・・・惹かれる面はあれど、住まう人の事を考えたら唐樓はどうなのか?って思うから、やっぱり一概に「保存を!」ではなくなりますね。
Commented by nicho at 2016-02-05 19:14 x
唐僂って本当に興味津々。一度で良いからお邪魔したい。もしくは、住んでみたい❕
なんて思っているのですが…
保存…良い方法ないですかね?ココをほんの少しだけリノベーションして宿泊施設なんかに変えるとか…需要ありそうですが、言うのは簡単ですが実際は難しいんでしょうね…
人がいなくなると本当にアッという間に朽ちていきますものね、取り壊さないようにして欲しいですよね…
Commented by hongkonggaffe at 2016-02-08 06:47
♫ nichoさん
年月を経てあちらこちらに不具合が出てきてしまうのは避けられないことでしょうし、その建物で実際に暮らすことを考えると利用する人々はおのずと少なくなっちゃいますよね。少しでも快適に暮らしたい、家計事情が合うならば住み替えをしたい・・・そんな想いをあたためてきた人々が、本当に望む住まいが街に必要なのでしょう。街が活性化するためには、やっぱり人が暮らしていることが必要だから、行政も尽くせる手立てはとっているようですね。堅尼地城では早い時期から室内をリノベーションして上手に暮らす欧米人が居たようですし、灣仔では唐樓を活かしたホテルが開業したという経緯もあります(今どうなっているかは不明ですが)。取り壊すだけではなく、補修して唐樓での暮らしを支援する取り組みも、政府によって進み始めました(過日記事にしましたが、現在何ヶ所かで始まっていて)。取り壊すだけでなく活用する方向は、以前よりも進められているような気がするので、行く先を見守りたいです(一介の旅行者ですから何も出来ないけれど)。
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